北条高時.com

うつつなき太守(なりきりです)による歴ヲタの備忘録

楠木登場~大河ドラマ「太平記」第6回の感想など

いよいよ楠木正成が登場した第6回。演じるのは武田鉄矢さん。すまぬが坂本金八臭が強すぎるというか、わしの正成のイメージとはちょっと違うんじゃけどな。

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足利高氏と赤橋登子の縁談がすすむ

足利貞氏と高氏は赤橋守時邸へ挨拶にゆく。むろん、長崎父子の陰謀から救ってくれた守時への御礼のためじゃ。そして、高氏と守時の妹・登子との「見合い」の意味合いもある。

「高氏殿のことにつきましては、もとより北条に非のあること。本来こちらより罷りこし、いかようにも詫びねばならぬところ、恐縮の至りでございます。この守時も、北条家の一人でございますれば、罪なき足利殿を牢に留め置く失態、なんと申し開きをいたせばよいやら、言うべき言葉もござりません。此は、北条家の不徳。伏してお詫びいたしまする」 

開口一番、北条の非を謝罪する守時。あ、いや、ちょっと待て。高氏は、謀反の嫌疑がかかる日野俊基六波羅が逮捕するのを邪魔したわけで、明らかな公務執行妨害だぞ。非は高氏にあって北条の処置は正当。しかも高氏は、北条への叛旗をすでに内に秘めはじめておる。守時が謝罪することなどないと思うのじゃが、どうじゃ?

まあ、それはよい。足利の顔を立て、こちらにとりこむことは悪くない。幸い、高氏は登子を気に入っているようで、紀貫之の古今六帖の話でもりあがっておる。貞氏と守時も盆栽談議に花を咲かせておるし、わしとしては、これで一件落着すれば、それはそれでよい。

そもそも此度の一件、わしは日野俊基か資朝を斬って事を収めようと考えておった。何事も穏やかが一番で、事を荒立てるつもりはない。

楠木正成登場

さて、場面変わって河内国・水分(みくまり)。ましらの石が楠木正成を訪ねる。石は腹が減って大根泥棒をしたところを正成にみつかる。この一連の演出は、庶民派代表・楠木正成を印象付けるためのものじゃが、ちょっとあざとくないか? 

屋敷に帰ると、弟で武闘派の楠木正季が正成に噛みつく。北条の横暴に憤り、いまの楠木があるのは朝廷のおかげじゃから、と正成をなじり、焚きつける。じゃが、正成はそれには乗らない。

「泥足で床に上がり込まれたら、後できれいに拭けばよい。古市の出入りを邪魔されたらば、ほかの市場で商いをすればよい。刀を抜けば、相手も抜く。斬り合えば、双方傷がつく。それで米の一石も余分にとれるか? 瓜が山ほどとれるか? 田畑が荒れて、人が死ぬだけだ。無益なことだ」

「世の中はゆっくり変わるでのう。悪い種が自然に滅び、良い種が良い米を作る。ゆっくりゆっくり。自然に世の中は変わる。良い世の中が見たければ、長う生きねば駄目じゃ」

正成はそう言い残して、農民たちと雨乞いに出かけしまう。

ここで視聴者は気付くじゃろう。正成の考え方は、高時と同じだということを。わしは大の戦嫌い、何事も穏やかが一番というのがモットー。刀を抜けば相手も抜く。じゃから、此度の帝の御謀反も寛大な措置をするよう、長崎に命じた。いまおもえば、いちど、正成の意見を聞く機会があったならば……幕府の行く末は変わっていたかもしれぬな。

よい大名と悪い大名

 

そして鎌倉では流鏑馬が行われた。高氏は武芸に達者で見事にすべての的を射抜いた。さすがは高氏、一二を争う弓取りじゃ。判官など、2度やって1度的をかすめただけじゃからな。じゃがな、わしが考えるよい大名は、ちょっと違うんじゃがな。

高時「足利殿、わしはのう、よい犬とよい一座を抱えた大名を、よい大名と呼ぶことにしておる。なぜかわかるか? 犬と踊りが好きなものは戦など好まぬ。わしに歯向こうたりはせぬ。この佐々木判官のようにのう。それゆえ、こうして心おきのう喋れる」
道誉「まことに。戦を厭われる平らかな御心が偲ばれまする」
高時「この口のうまさよ
(一同爆笑)

わしは戦が大の嫌いじゃ。人々が穏やかに、楽しく暮らしていくことが一番大事だと思っておる。わしの真意、はたして高氏に伝わったじゃろうか。

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このあと、判官は高氏に、藤夜叉が高氏の子を身ごもっていることを告げる。登子との縁談を控えているにもかかわらず、高氏は藤夜叉に会いたいといいだし、一色右馬之介に諫められる。

「このところ父上も母上も何も仰せにならぬ。だが登子殿とのことは、もはややむをえぬといった顔つきであらせられる。あれだけ北条嫌いであった師重たちですら、もはやそうじゃ。そういうこのわしも、赤橋殿と手をたずさえ、この鎌倉を少しずつでも正してゆけたらそれもよいかと。日一日、傾いていくのがわしもわかるのじゃ。だがそれでよいのか? みなそれでよいのか。京の都でみたことは、あれは夢か?」

高氏殿、それでよいのじゃ。帝もその取り巻きも白拍子も、京のものはみな、見た目は美しゅうみえるが中身は魑魅魍魎、腹の中はドス黒いものが流れておるのじゃ。関東の田舎者は、すぐに騙される。足利殿も誑かされておるのじゃ。

北条と手をたずさえてこの鎌倉を守り、よい犬とよい一座を抱え、穏やかに楽しく暮らしていく。これ以外にがいちばんなんじゃよ。