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うつつなき太守(なりきりです)による歴ヲタの備忘録

足利高氏と藤夜叉の悲恋~大河ドラマ「太平記」第7回の感想など

大河ドラマ太平記」第6回は「悲恋」。子を身ごもった藤夜叉のところに足利高氏が白馬の王子のごとくやってくる青春物語じゃ。もっとも、鎌倉は奥州の兵乱でたいへんな時期だったんじゃがな。

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奥州・安藤氏の乱 

鎌倉は緊迫していた。奥州・安藤氏の乱が激しさを増していたのじゃ。そんな中、長崎円喜がとつぜん足利邸へやってくる。赤橋家と足利家の縁組のお祝いにかこつけ、北条の身内として、足利に出兵要請にきたのじゃ。

此度の兵乱は、もともと円喜の息子・高資が安藤氏の相続問題に公平な裁きをせず、当事者双方から賄賂をもらったことで大騒動に発展したもの。円喜は、「奥州など兵の2万も送れば片付きます」と、高時に豪語したが、もはや北条だけでは手に負えなくなり、足利殿を頼ったという筋立てじゃ。円喜は貞氏に兵6千での出兵を要求用した。

「長崎殿は勝手だ」と嘆息する貞氏。そりゃあそうじゃ。高氏は円喜のせいで少し前まで牢につながれておったんじゃからな。貞氏にしてみれば「どの面下げて頼みに来るんだ!」と言いたかったじゃろう。

その話を聞いた高氏はいきりたつ。「なぜ断れませぬ」「登子どのとのことは無かったことに」とつめよる。「そうはいかぬ」と立ち去ろうとする貞氏に、「なにゆえでございますか」とかみついていく。この男、親の苦悩がわかっていないようじゃな。

そもそも足利は北条との血縁を重ね、それゆえ今の繁栄があるわけじゃ。いまここで、登子との縁談を破棄することは、それはもう北条への宣戦布告じゃ。そんなこと、できるわけないではないか。

いっぽう、高氏の心を惑わす藤夜叉は、道誉の屋敷で手紙を書いていた。そこへ石がやってきて、「足利は親の仇だ」「高氏は近々北条の姫を娶る」「北条の天下は長くない。足利などひとたまりもない」となじりだす。高氏の婚約にショックをうけた藤夜叉は、石に頼んで佐々木邸を抜け出そうとするが、道誉の家臣に見つかってしまう。

そこへ一色右馬介が現れ、二人を救い出す。そして藤夜叉の前には、白馬にまたがった高氏が颯爽と現れ、そのまま連れ去ってしまうのじゃ。

藤夜叉は「高氏さまが姫君を迎えるのを見たくない」「側女は嫌」「一緒に都へ連れ去ってほしい」と懇願する。思いがつのっていた高氏は藤夜叉を激しく抱き占める。そこへ石が表れて……

このあたりの話は割愛させてもらうぞ。

驚きの鎌倉包囲網シミュレーション 

足利邸に帰ってきた高氏は新田義貞と遭遇する。義貞は奥州に出陣することになったので挨拶に来たと告げる。

「われらは足利殿と違うて貧乏御家人。これより急ぎ新田の荘に帰り、田畑売って戦の備えをせねばなりませぬ」

鎌倉時代御家人の戦費用は自己負担が原則。御恩と奉公とはそういうものじゃ。何をいまさらとは思うが、そんなことはどうでもよい。このとき義貞は驚きの鎌倉包囲網をシミュレーションし、貞氏に決起をほのめかしつつ、真意を探りに来ていたのじゃ。

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下総の千葉、常陸の佐竹、下野の小山、上野の新田、甲斐の武田、駿河の今川、遠江の井伊などを足利が束ね、奥州に動員される兵を連れて反転し鎌倉を衝いたら……

 (((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

さすがにこれをやられたら、北条はピンチだったじゃろう。義貞と貞氏は腹を探り合っていた。じゃが、所詮は机上のプラン。義貞は「足利が立てば天下が動く」などと暗にもちあげるが、じっさいに足利にそれほどの力があるのかどうか。とてもじゃないが、そう容易くはいかぬじゃろう。

ここで高氏は、藤夜叉との逢瀬の余韻そのままに、貞氏につっかかる。「だったら、俺は登子じゃなくて藤夜叉にしとくわ!」といわんばかりの剣幕じゃ。

「父上は敵となる赤橋家の、その赤橋家の女をそれがしに……高氏はもはや我慢なりませぬ。父上はなにを考えておられる! 真意をお聞かせくだされ。その次第にては、高氏にも覚悟がござりまする」

「覚悟? 覚悟とはどの覚悟だ。北条といくさする覚悟か。ならば、兵を集めねばならん。そのために北条を欺かねばならん。赤橋登子殿を嫁にとる覚悟か。それとも、いくさを捨て、家を捨て、どこぞの白拍子と夢のごとく生きていく。その覚悟か?」

貞氏パパ、よくぞ言ってくれた。高氏の覚悟とはなんぞや? 御曹司の言う覚悟は「匹夫の勇」にすぎぶ。ぐーのねもでない高氏に、貞氏は棟梁としての心得を説いて聞かせる。

「足利一門、諸国合わせて何千の兵が、わしが動けば動く。女子どもを合わせれば万の数だ。それらの者をみな、殺すことになるかもしれん。それよりもだ。赤橋殿と力を合わせ、戦もなく幕府を正すことができるなら、赤橋登子殿は救いの神だ。それができるなら……」

「わしもそなたも足利の棟梁として生を受けた。それから逃れることはできぬ」

人の上に立つというのは、なかなかに難しい。お家を預かるだけでもたいへんなのに、ましてや一国のかじ取りと民の安寧を担う執権ともなれば、その辛苦は比べものにならぬのじゃよ。

赤橋守時、登子の覚悟 

同じ頃、幕府でも奥州に北関東の御家人を送ることについて、評定がはじまっていた。金沢貞顕は関東に軍勢を集めるのは危険だと説く。さすが児玉清さん演じる貞顕、これが足利にとって絶好のアタックチャンスであることを見通しておる。

さらに赤橋守時は、これは北条(の御内人長崎高資)の不始末が発端なんじゃから北条が解決すべきと主張する。守時、なかなか言うのう。チクりとやられた円喜。これはもう撤回するしかないわな。

それにしても金沢貞顕赤橋守時、頼もしいではないか。わしとこの2人、そして足利殿とで幕政改革をすすめておったら、鎌倉は崩壊せず、その後の南北朝の騒乱もさけられたかもしれぬ。惜しいことをしたぞ。じっさい、わしはそのための密議をこらしていたのじゃが……それはまた、時が来たら話そう。

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評定から帰宅すると、守時は出迎えた登子に祝言の日取りを告げる。

「同じ鎌倉の中じゃが、ずいぶん遠いところへやるような気がする。つらいことがあるやもしれん。よいか」 
「覚悟の上でござりまする」
「この鎌倉を戦から守るのは、そなたとこの守時になるやもしれぬ。頼むぞ、登子」

うむ。登子の覚悟は高氏と違って本物のようじゃ。これまた、じつに頼もしいではないか。

それに比べて、足利の御曹司は……藤夜叉との逢瀬のため、約束の海岸へ馬を走らせるのじゃった。この男の覚悟とは、やはり、どこぞの白拍子と夢のごとく生きていくことなのじゃろうかのう。