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うつつなき太守(なりきりです)による歴ヲタの備忘録

「サムライせんせい」が最終回〜時代を嘆くな!今を生きるぜよ!

いやいや、「サムライせんせい」は面白かった。今夜で最終回だったんじゃが、金曜夜の楽しみがなくなってしまったよ。サッチン役の黒島結菜さんの「ちょりーす!」も、もう見ることができないと思うと、残念じゃな。

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武市半平太坂本龍馬が平成の世にタイムスリップ

「サムライせんせい」は、黒江S介氏によるコミックで、幕末から武市半平太がタイムスリップして平成の世にやってくるという話。ちょんまげ姿で現代の文明にカルチャーショックを受ける武市半平太を演じるのは錦戸亮。一足先にタイムスリップしてきて、ライター生活をしながら平成の世を「もう一度ぜんたくしよう」とたくらむ坂本龍馬を演じるのは神木隆之介。毎回のドタバタなコメディは痛快で、そのくせ幕末の志士視点と道徳観から、武市半平太現代社会に驚き、悩み、怒りながら発するセリフにはドキっとしたり、ホロリときたり。

武市や龍馬が同志とともに命を懸けた維新回天の行末が、この平成日本。攘夷は実現できなかったけれど、人々は平和で快適に暮らしておるし、風紀や秩序の乱れは気になるが、士農工商身分制度もない、男女同権の世で自由気ままに生きている。武市もまた、居候している佐伯家の寺子屋塾の先生をしながら、そんな平成日本を受け入れ始めていた。

じゃが、最終回で武市は「現代はお金が身分を決めている」という平成の実態を目の当たりにし、龍馬からふたりで維新をやり直そうと持ちかけられる。

「平成の世に来て気づいたんじゃ。悔やしいが海道(青年実業家)のいうとおり、今の時代は金をもちゅうやつが偉いぜよ。金が悪だとはいわん。ただ権力の源になっちゅう金は、志のない者に握られちょる。下の者たちの側には糺す気概もない。時代を嘆き、諦めちょるだけじゃ。ほいじゃき、わしは『平成建白書』をつくり、底辺にいる者たちに訴えかけたがじゃ。いっしょに日本を変えようと」

龍馬は海道に天誅を加えるという。そして海道と政界との癒着を暴露し、世直しのうねりをつくり、時を同じくしてインターネットで集めた1万人の同志が一斉に蜂起するという計画を武市に明かす。この「蜂起」というのが武器を持って立ち上がるのか、SEALDsみたいにデモをやるのか、そこはよくわからんのじゃが、ともかく龍馬は昔でいう「一揆」を起こすと武市に告げるのじゃ。

「今の世の中には貧富の差に対する不満がくすぶっちょる。その怒りは日本全体に広がるはずじゃ。差別されちょった者たちが、差別しちょった者たちに鉄槌を下す。権力の源になっていた金が、みんなに、正しく再配分されていく。これが、わしが目指す新しい日本じゃ」

しかし、龍馬は人殺しを嫌っていたはず。武市は龍馬に問う。

「けんど、人を殺すがは、おまんがいちばん嫌がったやり方じゃろう。わしが(吉田)東洋様を暗殺すると聞いて、おまんは脱藩した。そんなおまんが、どうしてこんな強引なやり方を選ぶがじゃ」
「武市さん、中岡慎太郎、覚えちょるがかい? あいつは、暗殺されるまでわしといっしょにおったがじゃ。あいつはのう、死ぬまで、武市先生、武市先生、言うちょった。わしもじゃ。武市さんが切腹した後、ずーっと思うちょった。もしも武市さんが生きちょったら、薩摩でも長州でものうて、土佐の武市半平太が新しい日本を率いておったはずじゃと」
「この時代に来て、わしは悔やしかった。もしも武市さんが生きちょったら、こんな国にはなってなかったはずじゃと。ほんじゃき、わしは、武市さんのやり方で、強引にでもこの時代を変えると決めたがじゃ」

武力倒幕ではなく、大政奉還により穏便な新政府樹立を求めていた坂本龍馬。じゃが、薩摩と長州は徳川幕府を挑発、内乱を惹起し、血の代償を求めた。もちろん、そのとき、すでに龍馬は死んでいる。薩摩にとって龍馬は邪魔な存在。ドラマのなかで神木龍馬は自分の暗殺に黒幕が存在することを何度か臭わせていたが、それが薩摩藩じゃったということを感じさせるセリフにも聞こえるのう。

いずれにせよ、こんな金権腐敗の日本をつくるために、われわれは命を懸けたのではない。じゃから、いま一度、「維新をやり直す」というのが龍馬の決意というわけじゃ。

「わしらがやるんじゃ。それが、わしらがこの時代に来た天命なんじゃ。武市さん、この時代を変えんかえ。もう一度、わしらの手で日本を、いや、世界をせんたくするぜよ」

盟友の龍馬に「天命」とまで言われ、このとき、武市は賛同し、合力を約束するのじゃが……

錦戸亮神木隆之介の見事な殺陣シーン!

武市は世話になった佐伯真人(森本レオ)に挨拶するため、神里村に帰る。しかし、神里村には海道たちが乗り込んできて、ひと騒動おこる。そして武市は、海道の手下に銃で撃たれた拍子に一時的に元の時代にタイムスリップし、妻・富子と再会するなど、いかにも最終回らしくバタバタとストーリーが展開していく。そして、平成の世に戻ってきた武市に、佐伯真人は富子が未来で生きているはずの武市に宛てて書いた手紙を渡す。どうやら佐伯家は、武市富子とは遠縁で、この手紙を代々、受け継いでいたという設定らしい。その手紙には、山内容堂後藤象二郎が、武市を切腹に追いやったことを悔いていること、その結果、武市の復権がなったこと、それでも今なお戦が続いていること(西南戦争か、日清・日露戦争か?)、そして人々が殺しあわない時代が来てほしいという思いが書かれていた。

それを読んだ武市は、力で、武力で物事を解決することの非を知る。そして、龍馬の計画を阻止するために動き出すというわけじゃ。もっともわしは、海道のような奴に天誅を加えるのは、ぜんぜんOKじゃと思うのじゃが、そのあたりがわしと武市半平太の器の大きさであり、人気の違いなのかもしれんがのう……

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そして迎えたのが武市と龍馬が東京の夜景をバックに壮絶なデュエルを繰り広げるこの場面。錦戸亮神木隆之介の息のあった殺陣シーンは素晴らしく、じつに見応えがあったぞ。

武市「すまぬ、あざ(龍馬)。わしが間違うちょった。東洋様を手にかけた結果、わしは切腹させられ、同志らは処刑された。さいごにはなんちゃあ、残らんかった。目の前の壁を力づくで消すことのみでは、なんちゃあ解決にはならん。力づくの解決は悲劇を生むだけじゃ。ようやっとわかったがじゃ。わしがこの時代に来た意味が。あざ、おまんを止めるためじゃ」

龍馬「今の時代、わしらが戦った先の未来が、こんな日本であるはずがない。武市さんも、そう思ったんじゃないがか」

武市「たしかにそう思うちょった。ふがいない若者にいきりたった。ただ、ボーっと暮らす人々が歯痒かった。けど、違うたんじゃ。この平和ボケした今は、先人たちが勝ち取ったものなんじゃ。龍馬、時代を嘆くな! 今を生きるぜよ!」

この後、刑事が乗り込んできて武市と龍馬は逃走する。長くなるのでこの後のストーリーは割愛するが、村役場のセクハラ課長に変わって、比嘉愛未演じる佐伯晴香が村長選挙に立候補し、「美しすぎる村長」として脚光を浴びているのは、これまた痛快じゃったぞ。

「この平和ボケした今は、先人たちが勝ち取ったものなんじゃ」

けっきょく歴史というのは先人たちが紡いできた過去の集積なんじゃな。その先人たちには、いわゆる英傑、偉人として賞される者もいれば、汚名を着せられる者もおる。武市半平太坂本龍馬はまさに前者であり、わしなどは後者の典型じゃ。それが的を射ているかどうかは、時代により人により変わる。それぞれの価値観だからしかたがない。好き勝手にいえばよい。じゃが、そうした彼ら彼女らの事績ひとつひとつが歴史を紡いでいるのであり、さらにいえば、名も無き民ひとりひとりが、歴史に参画して、いまの世につながっているということを、われわれは忘れてはいけないということを、ぺーた先輩は言いたかったんじゃと思う。

こんなドタバタ・ドラマはエンタメとして笑って泣いて、それでOKなんだろうけど、ぺーた先輩のセリフに、ちょっと考えさせられてのう……

ちなみに、番組の最後に「重大発表」というテロップが出たので、「おっと!映画化か? 続編決定か?」と思って期待していたらCM明けに「DVD・ブルーレイ発売決定」と出たのは、興醒めじゃったけどなw

まあ、原作はまだ第2巻で中途だし、視聴率もそれほどよくなかったようだから、なかなか続編は難しいのかもしれないけど、武市も龍馬も、いまを生きておる。ぜひとも、この続きを期待しておるぞ。できれば、岡田以蔵とか、西郷吉之助とか、土方歳三、さらには時代を超えて、いろんな偉人がタイムスリップしてきて、平成日本で活躍してくれるとうれしいんじゃがな。

もちろん、わしもオファーを待っているからな〜