「花燃ゆ」が最終回、平均視聴率が12%と、「平清盛」と並んで、歴代大河ドラマワーストタイとなったらしい。美和さんと楫取は機嫌よう鹿鳴館でダンスをしていたのに、なんとも残念なニュースじゃな。
「主人公がマイナーすぎる」「イケメンそろえりゃいいというのは安易だ」「史実の無視、捏造がひどい」「シナリオが最悪」などなど、低視聴率の理由がいろいろといわれているが、要するにつまらなかったということじゃな。
それはそうじゃろう。吉田松陰はけっきょく家族や藩に迷惑かけるだけかけて、さいごは余計なことしゃべって処刑。久坂玄瑞も来島又兵衛に「医者坊主!」といわれてブチ切れて暴発し、長州藩を朝敵に貶めて割腹自殺と、これまた最悪の男子にされてしもうて、どいつもこいつもまったく共感できない。
高杉晋作は唯一よかったと思うんじゃが、あのクライマックスともいうべき「おもしろきこともなき世をおもしろく」の最期の場面に、なぜか、いてはいけない美和さんがしゃしゃり出てきてしまって、もう台無し。晋作ファンに総スカンをくらったこの時点で「花燃ゆ」は詰んだということじゃよ。
群馬編に至ってはもうどうでもいい、という感じで、わしは脱落。もっとも、美和さんと楫取では、ホームドラマ路線を走るしかなかったんじゃろうが、だったら「あさが来た!」に負けないくらいがんばらなきゃダメじゃろう。それができんのであれば、「サムライせんせい」くらい大胆にやれば史実無視とかだれも言わんし、大河ドラマの新機軸として評価されたじゃろう。いずれにせよ、脚本家を4人もとっかえひっかえする迷走ぶりは前代未聞の珍事じゃな。
おまけに、美和さんと楫取が群馬から帰って余生を過ごした、ふたりのお墓もある山口県防府市では、1億2000万円もの費用をかけて、「ほうふ花燃ゆ大河ドラマ館」をオープンしたのに、NHKが低視聴率のてこ入れのためストーリーを変更したせいで、作中での防府市のシーンは割愛。桜田門外の変や大政奉還と同様、得意のナレーションでスルーとなり、地元は大激怒。井上真央さんがお詫び行脚に出向いたとか、もう、びっくりぽんじゃよ。1年間、「みなさーん、ごはんですよ〜」と、おにぎりを握り続けた彼女が、あまりにも不憫でならぬよ。
わしはやはり、ここは奇をてらわずに、列伝風にするべきじゃったと思うぞ。
吉田松陰、久坂玄瑞、高杉晋作、前原一誠、伊藤博文とつないでいに、彼らの生き様から、幕末の長州が何を一途に目指し、結果はどうなったのかを骨太に描くべきだったんじゃ。前原一誠は吉田松陰にもっとも愛された人物だし、会津藩との交流とか萩の乱とか素材としては悪くない。伊藤博文も初代内閣総理大臣だし、日清日露戦争、そして安重根に暗殺されるまでをきっちり描いたら、安倍総理も喜んだはずじゃし、重厚な作品に仕上がったと思うぞ。じつにもったいないのう。
かくして、みんなで「せわあない」「せわあない」とやっているうちに1年が過ぎ、「幕末男子の育て方」というドラマコンセプトは「幕末男子の殺し方」になってしもうた。笑えないよ、これ。なんでこんなことになってしまったのか。
やはり、制作スタッフに「志」がなかった、ということじゃろうな。