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うつつなき太守(なりきりです)による歴ヲタの備忘録

対馬・金田城跡の魅力〜息をのむ景色が広がる天空の古城に行ってきたぞ

壱岐・対馬の旅の備忘録として、今回は金田城跡について。NHKの番組で「最強の城」に選ばれ、「ブラタモリ」にも登場した金田城。それでもまだ、全国的な知名度は?じゃが、その圧倒的なスケールと絶景には息をのんだぞ。

金田城跡から防人ビュー

金田城跡東南角石塁から黒瀬湾を臨む防人ビュー

なお、壱岐・対馬の歴史と旅の備忘録についてはこちらも読んでもらえればありがたい。それでもって、こんな稚拙なブログでも関心が湧いたらぜひ、旅をしてほしい。歴ヲタなら間違いなく楽しめて学びがあるところじゃよ。

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白村江の戦いと対馬・金田城

ますは金田城の基礎知識。金田城は対馬島の浅茅湾西側の城山(じょうやま)山上に築城された朝鮮式古代山城である。天智天皇2年(663)、日本は百済救済のために朝鮮半島へ兵を送るが、白村江の戦いで唐・新羅連合軍に大敗してしまう。中大兄皇子(天智天皇)は、この危機に大宰府の防備を固めるために対馬、壱岐、筑紫国に防人・烽(とぶひ)を設置し、筑紫に水城を築城して外寇に備えた。

金田城については『日本書紀』天智天皇6年(667年)条に「築倭国高安城。讃吉国山田郡屋島城。対馬国金田城」とあり、高安城、屋島城ともに築城されたことが記されている。朝鮮半島との緊張関係が高まる中、金田城は国防の最前線拠点の役割を担ったのじゃよ。

その後、いつしか金田城は廃城になったようで、歴史の中に埋もれていく。漫画『アンゴルモア 元寇合戦記』では、金田城は刀伊祓いの拠点となり、この城地においてモンゴル軍を迎え撃っている。またゲーム「GHOAST OF TSUSHIMA」でも重要拠点として登場しているが、もちろん金田城に関してそういう史料、記録の類はない。

江戸後期、対馬近海に列強の外国船が出没するようになると、対馬藩は海防のための計画書『海辺御備覚』を作成している。そこには城山の陣構えが記されており、金田城の修築がなされことがうかがえ、久しぶりにこの地が国防の重要拠点として認識されることになる。そして帝国主義がアジアに波及した明治期には、城山に砲台、堡塁がつくられている。

その後、大正昭和の発掘調査により、この場所があらためて「金田城跡」として比定される。そして昭和57年(1982)、金田城は国の特別史跡に指定され、現在では日本城郭協会による「続日本100名城」に選定されている。ちなみに読み方は「かなたのき」、国の史跡としては「かねだじょう」と呼ぶようじゃよ。

金田城ジオラマ(ふれあい処つしま)

金田城ジオラマ(ふれあい処つしま)

厳原の対馬の観光案内所「ふれあい処つしま」には金田城のジオラマがある。これをみると位置関係や規模の大きさがよくわかる。金田城を攻略する前に立ち寄ることをおすすめしたい。

「ふれあい処つしま」は、対馬と中国大陸、朝鮮半島の関係史も頭に入るし、地元のグルメも楽しめる。ちなみにわしが食べたのは対州そばと穴子の天ぷらじゃよ(←これは美味かった)。

国指定特別史跡「金田城跡」へのアクセス

金田城跡

金田城入り口

金田城跡登山道入口

金田城跡登山道入口(駐車場有)

わしの場合、金田城跡まではレンタカーを利用した。対馬やまねこ空港からはここまでは30分強くらいじゃろうか。すいすい走っていたから見逃しそうになったけど、やおら標識が出てくる。そしてこの後は登山道入口の駐車場まで細い山道をくねくねと進んで行く。

「こんなところ、クルマで入っていって大丈夫か?」と不安になる道を進んでいく。いちおう通行する分には問題ないがすれ違いはほぼ不可能じゃから、もし対向車が来たらそれは不運という他はない。なお、割と格安なタクシーツアーもあるらしいから、運転に不安があるなら使ってみてはどうじゃろうか。

ゆっくりひたすら細い山道を上がっていき、ぐーっと下ったところに駐車場があった。途中にトラップみたいな案内板があるが、それらに惑わされずに登山道入口を目指す。

駐車スペースは4台。わしが行ったときは一台も停まっていなかったが、駐車要領を示す案内があるのでそれに従って停めるようにしよう。もっとも少し手前にも駐車スペースはあるし、その少し先の簡易トイレ近くにも停められそうなので、まあ、駐車台数については気にせずともなんとかなるじゃろう。

まずは「東南角石塁」を目指す

金田城跡

クルマを止めた後は、東南角石塁を目指して、こんな道を上がっていく。登山道は明治期につくられたかつての軍道をもとに整備されている。勾配もそれほどでもないから、東南角石塁跡までであれば森林浴気分で上がっていけるぞ。

10分ほどで黒瀬湾が眼下に見えるようになるから、石塁込みの絶景を眺めるのを楽しみに、ゆっくりと上っていこう。

金田城跡東南角石塁

金田城跡東南角石塁

 

20分程度で東南角石塁に到着。この感動は写真や文章では伝えられない好風景じゃ。おそらく、防人や古人がみた風景も、今とさほど変わらんじゃろう。人が全然いなかったので、風の音と鳥の声しか聴こえない、とにかく静寂。まずはここで持参してきたおにぎりを食べたぞ。

金田城東南角石塁

金田城東南角石塁

東南角石塁は古の遺構を今に伝えている。説明によると、ここの石塁は敵の攻撃からの防衛力を高めるために「張り出し」を構えているらしい。じゃが、城についての造詣がないわしは、正直、みてもよくわからんかったけどな。

近くには掘立柱建物跡があり、兵の詰め所、もしくは見張り場だったのではないかと考えられる。朝な夕なここから海を眺めておったのじゃろうか。しばしここで防人気分を味わってみる。

対馬の嶺は下雲あらなふ可牟の嶺にたなびく雲を見つつ偲はも

「万葉集」に収められた防人の歌。もちろん作者は不明。

はじめ防人には相模、常陸、武蔵など東国の民が選ばれた。なぜ東国の人たちが選ばれたかは謎じゃが、大和朝廷にまつろわぬ東国の人々の力を削ぐためだったのかもしれない。中央は地方に厳しく冷たい。それは昔からのことじゃ。

防人の任期は3年。部領使につれらて徒歩で北九州までやってきて、無事に勤めを果たした後は自腹で帰らされたというから、なんとも酷い話である。当然、帰りたくても帰れない人もたくさんいたことじゃろう。

3つの城戸をめぐる「石塁見学コース」へGO

現地ガイドには、金田城攻略コースとして「石塁見学コース」「山頂コース」「結合コース」の3つが提示されていた。わしは時間の都合上、本来であれば東南角石塁だけをみてリターンする予定だった。じゃが、次回はいつ来れるかわからんし、この圧倒的な石塁をもう少しみたくなり、予定を変更し、急いで「石塁見学コース」を進むことにした。ここで帰ってはもったいないしな。

金田城三の城戸跡

金田城(三ノ城戸跡)

金田城二の城戸跡

金田城(二ノ城戸跡)

金田城(一の城戸跡)

金田城(一ノ城戸跡)

金田城の石塁の総延長は約2.8キロメートルにもおよぶ。多くの古代山城はほとんど土塁じゃから、城壁のほぼ全てが石塁というのは珍しい。戦国時代の城の石垣と比べても、この規模は圧倒的じゃし、そもそも石塁であって石垣ではないからイメージとしては万里の長城に近いような気もする。それにしても、重機もない時代に、こんな急峻なところに、よくぞこんな石塁を築いたものじゃ。

金田城の城戸(城門)は3箇所ある。城戸を回るルートはところどころ難所もあり、ちょっと注意が必要じゃが、それなりに整備はなされているので心配は要らない。

三ノ城戸では最も高い2.7mの石塁をみることができる。ここではかなり大きな石が使われておったぞ。

二ノ城戸は他の城戸より調査、整備が進んでいるようで城門の雰囲気がよくわかる遺構になっていた。下に降りて見学できるので、古の城門のイメージがしやすい。

そして一ノ城戸。寛政期に修復された可能性もあるそうじゃが、穴太衆もびっくりな石積みじゃったよ。 

ビングシ土塁

金田城跡ビングシ土塁

ビングシ山

ビングシ山

二ノ城戸を進んで小峰を上がっていくと広い平場に出た。ここでは掘立柱建物跡がみつかっており、城の中枢と想定されている。防人の住居らしきものもこの辺りにあったらしい。

建物跡のあたりには防御のための土塁があり、案内書には「ビングシ土塁」とある。この辺りは鞍部になっており、その形が女性の鬢櫛(びんぐし)に似ていることから「ビングシ山」と名づけられたそうじゃよ。

国境の島に築かれた、これぞ最強の天空の城

「石塁見学ルート」をまわった後は山頂に向かうことも考えたが、帰りの飛行機の便の関係で断念。リアス式海岸の浅芽湾を一望できる絶景スポットと聞いていたので後ろ髪を引かれる思いじゃったが、これはやむを得まい。

黒瀬湾

黒瀬湾

金田城は、2019年のNHK番組「あなたも絶対行きたくなる!日本『最強の城』スペシャル第4弾」で注目された城跡である。千田嘉博先生をはじめとする専門家と城好きの芸能人が「最強の城」選定するという番組で、金田城跡は「息をのむ景色が広がる天空の城」部門で1位となった。

今回、わしは城山山頂までは行けなかったが、それでも実際に訪れてみて、その評価に相応しいスケールと絶景を堪能できて大満足じゃ。

あらためて金田城跡の魅力をまとめれば…

  • 古代朝鮮式山城という歴史ロマン
  • 圧倒的なスケールのダイナミックな石塁
  • 古から変わらぬであろう眼下の絶景
  • 癒しの自然と静寂の時
  • 対馬までやって来たという達成感

うーん、上手く言えぬが、今回の壱岐・対馬の旅のメインディッシュという期待を遥かに超えた史跡じゃったよ。

有史以来、つねに国防の最前線の役割を担ってきた対馬。現在もなお、そういう存在のままでいるのかもしれぬな。

歴オタはもちろん、「アンゴルモア」の読者、「GHOAST OF T SUSHIMA」のプレイヤーであれば、絶対に胸熱なスポットじゃ。ぜひ一度は訪れてみてほしいぞ。